「ヒンターラント」映画ネタバレ感想 戦争に翻弄される男のドラマ

映画「ヒンターラント」のあらすじと観た感想を紹介します。

結末のネタバレがあるのでご注意ください。

作品情報

大戦後に、祖国に帰還した軍人が連続殺人事件の犯人を追うスリラー映画。

第一次世界大戦後のオーストリア。ロシアでの捕虜収容所生活を経てオーストリアに帰郷した軍人ペルク。そんな彼の周りで残忍な方法でかつての戦友たちが次々と殺されていく。その手口から収容所生活を共にした仲間が犯人だと考えたペルクは心当たりのある人物のもとに向かうが・・・。

2021年製作/99分/PG12/オーストリア・ルクセンブルク合作
原題:Hinterland

あらすじ

捕虜収容所からの帰国

第一次世界大戦終結後、ロシアでの捕虜収容所での生活を経て故郷のオーストリアに帰国したペルク。自分の家に到着するが、そこに妻と娘の姿はなかった。妻アンナと娘マレーネはアンナの妹のところに身を寄せていることを知る。

ペルクは妻子に会うためグンポルツキルヒェン行きの列車の切符を買おうと窓口に並ぶが、スリにあい財布を盗まれてしまう。

戦友が殺されてしまう

その日は列車に乗るのをあきらめたペルクのもとに警察がやってくる。ペルクは顔なじみのレンナー警視に遺体解剖が行われる建物に連れていかれる。その一室で何者かに殺されたとみられる遺体を見せられた。それはペルクの大戦時の戦友クライナーであった。遺体には19本の杭が刺されていた。レンナーは殺人現場にペルクの身元を示す紙が落ちていたことから、ペルクのことを犯人だと疑っていた。

さらに犠牲者が増える

その後もまたペルクの戦友が殺される事件が発生する。その遺体は一本を除き手足の指が19本切断されていた。犯人を見つけるためペルクは独自に捜査を始めた。

ペルクは妻と娘の住む家まで行き遠くから2人の姿を見つけるが、気づかれる前にその場を離れ帰宅した。

帰宅した際の家の使用人との会話から、レンナーとアンナが男女の関係になっていたことを悟ったペルクはレンナーのもとに行き暴行を加えた。

自暴自棄になったペルクは酔った状態で教会に足を踏み入れる。そこで一連の殺人事件の犯人らしき人物に襲われる。すぐに警察が駆けつけ犯人は逃げていった。

解剖医のケルナー博士と共に食事をした際、新たな犠牲者が出たことを知らされる。犯人は、相手の両手を縛り動けなくさせネズミに足をかじらせていたという。

犯人の動機

ネズミの餌にされた被害者の名前はリヒターであるということがわかる。さらに、19本の指を切断されたもう一人の被害者の名前はベルンフェルトであると判明。

それらの名前を聞いて思い当たることがあったペルクはすぐにレンナーのもとに駆けつける。

ペルクはレンナーに犯人の動機が分かったと告げる。これまでの被害者にはある共通点があった。クライナー、ベルンフェルト、リヒターはペルクと同じくロシアで捕虜収容所生活を送っていた人々だった。

ペルクはこの3人が犠牲になった理由を捕虜収容所生活での出来事と絡めて語り始める。収容所を脱出して捕まるとひどい拷問を受ける。また、脱走者は捕虜仲間の怒りも買う。脱走を通報しないと連帯責任で10のうち1人が射殺されるからだった。

収容所では6名の将校が選ばれ委員会を作らされた。あるとき、20名が脱走計画を立てたがそれを知った委員会が計画を中止するように頼んだ。すると20名のうち1名が脱走の日時を委員会に密告。委員会は計画を通報し5千人が射殺されるのを免れた。

計画の日時を密告した1人をのぞく19人は壮絶な拷問を受けた。密告者は自分の行いを後悔して精神が崩壊した。

そして今、収容所から帰国し残酷にも殺された3人こそかつての委員会のメンバーであった。犯人は殺された仲間の人数である「19」にまつわる方法で殺人を実行していたのだった。

残る委員の安否

残る委員会メンバーの命も狙われているとペルクは言う。ペルクはセヴェリン警部に同行し、メンバーの家を訪ねて回る。一件目のヘレシュマティ伯爵は帰国後すぐに亡くなっていたことが判明。

続いて、ヴェニンガーがいるとされる醸造所を訪れる。そこで体をバラバラにされそれぞれのパーツを氷漬けにされたヴェニンガーの遺体を発見する。

ペルクは街中で密告者のバウアーを発見。咄嗟に人質を取ったバウアーはレンナーに射殺されてしまう。

真犯人の正体

しかし、ペルクは真犯人から鐘塔に呼び出される。犯人はセヴェリン警部の兄ヨーゼフだった。ヨーゼフはペルクの住む街におびき出され教会に向かうアンナとマレーネの姿をみせる。アンナはそうとは知らされず爆弾が入った小包を持たされていた。そのまま教会に向かえば、そこで爆発が起き周りの人々が犠牲になるとペルクに告げる。そして、用意したスナイパーライフルでアンナを殺しマレーネとその他大勢の命を救えと言った。

実は、ヨーゼフは脱走を計画したうちの一人で、ひどい拷問を受けたが奇跡的に生き残っていたのだった。さらに、ペルクは収容所での委員会であったことも明かされる。そんなわけで、ヨーゼフはペルクに復讐しようとしていたのだ。

ペルクは自分の妻を撃つことができなかった。そこでヨーゼフはペルクをロープで縛り逆さ吊りにして首にも縄をかける。

そこへ、セヴェリン警部率いる警察隊が突入する。セヴェリン警部はヨーゼフに発砲し、銃弾は腹に命中した。

ペルクはセヴェリン警部をヨーゼフに近づけないようにかばおうとした。セヴェリン警部が探していた行方不明の兄だったのだ。

セヴェリン警部はヨーゼフの姿を見て自分の兄を撃ってしまったことにショックを受ける。ヨーゼフはペルクに銃口を向け引き金をひこうとした。セヴェリン警部はペルクを助けらためヨーゼフを射殺した。

その後、ペルクは妻子が住む家をあらためて訪れた。玄関先にいた妻アンナがペルクの姿に気づき驚いた表情をした。

感想

戦争に翻弄される男のドラマが胸に来る

第一次世界大戦終結後、ペルクはロシアでの捕虜生活から解放され故郷のオーストリアに帰ってくる。戦争の影響で世間は貧困に苦しむ人々であふれかえっていた。自宅にたどり着いたペルクは妻が娘を育てるため身内の家に身を寄せていることを知る。ペルクが列車で妻子に会いに行こうとしたその日、かつての戦友が殺される事件が発生。自分の戦友が殺される事件がその後も続いたことでペルクは独自に捜査を始める。

戦争に翻弄される男のドラマがドスンと胸に来る非常に重たい作品でした。命を懸けて戦い捕虜生活も耐え抜いた人々に待ち受ける第二の人生はあまりにも非常で戦争の理不尽さを痛感します。

捕虜収容所生活をテーマに戦争の恐ろしさを観客に突きつけるような内容で、捕虜が脱走できないように連帯責任を課すシステムがあまりにも残忍でした。このシステムが多くの人間を苦しめたり、仲間を憎しむ心を芽生えさせます。

主人公のペルクを通してこの映画が描くのは、「戦争のせいで、何もかもを失い心に傷を負っても、それでも生きていくしかない」ということ。自分の人生に超弩級のツライことがあったときにみると沁みると思ったので、その時が来たらまた鑑賞したいです。