「悪魔の世代」映画ネタバレ感想 渋くて大人なサスペンス映画

映画「悪魔の世代」のあらすじと観た感想を紹介します。

結末のネタバレがあるのでご注意ください。

作品情報

リトアニアの地方都市で起こる連続猟奇殺人事件を描いたミステリー・サスペンス映画。

リトアニアのある地方都市の警察署長を務めるギンタスの知り合いの検事が自宅で殺されてしまう。検事を殺した犯人を突き止めるために都会からやってきた検察官シモナスによってギンタスは犯人だと疑われてしまう。ギンタスは、真犯人を見つけるべく必死の捜査を行うがその間にも次々と犠牲者が出てしまい・・・。

2021年製作/114分/R15+/リトアニア
原題:The Generation of Evil

あらすじ

市長選に立候補した男

警察署長を務めるギンタスは知り合いの検事ライモナスの妻と不倫の真っ最中だった。すると、息子ベネイの通う学校から呼び出しの電話がかかってくる。ベネイが授業中に悪ふざけで家から持ち出した銃を教師に向けたからであった。

同じ日の夜、多くの人が集まるギンタスの誕生日パーティが開かれた。警察署長を務めるギンタスはその場で市長選に立候補することを発表する。そのあと、検事のライモナスが自宅で死亡しているのが発見される。現場を訪れたギンタスはライモナスの妻との不倫の映像が何者かによってライモナスのスマホに送信されていることを知る。市長選への悪影響を心配したギンタスはそのスマホをこっそりと持ち出し下水道に流して証拠隠滅を図った。

検事の死因

ライモナスの死を受け、検事局のシモナスという検察官がその調査に乗り出した。ライモナスは自ら命を絶ったとされていたが、それを怪しんだシモナスはライモナスの遺体を墓から掘り返し検視することにした。検視の結果、ライモナスは毒蛇を使った惨い拷問を受けていたことが明らかになる。

一方、警察はライモナスが亡くなる前にその家に箱を持って訪れたスラバという男が監視カメラに写っているのを発見する。

シモナスは不倫の証拠隠滅のためにギンタスが捨てたスマホを発見。ギンタスの家宅捜索を始める。ギンタスの家からはライモナスを撃ったとみられる銃が見つかった。しかし、それは実際のところライモナスからギンタスへ贈られたプレゼントであったがシモナスはそのことを信じなかった。

さらなる犠牲者

ギンタスはライモナス殺害に赤い車が関わっていたという目撃情報からその持ち主のシモニス神父を問いただした。しかし、シモニスは殺害していないと主張した。その後、教会で神父の遺体が発見される。首を切り落とされヘラジカの頭と挿げ替えられていた。

シモナスはこれらの証拠からギンタスを犯人だと断定し拘留した。

ギンタスと交流のあるユリウス判事はビタウタスという現在は釈放されている元囚人がライモナス殺害に関与していると睨み、調査を始める。ビタウタスは、すでに殺されたライモナス、シモニスやユリウス、ギンタス、現市長のラザと因縁のある人物だった。

ユリウスはビタウタスに関する調査を進める一方で、ギンタスを保釈するよう裁判所命令を出した。

しかしその直後、ユリウスも車の中で亡くなっているのが発見される。ハチを興奮させる液体を顔に掛けられ、何箇所も刺されたことによるショック死だった。

ギンタスの息子が行方不明になる

ギンタスはユリウス判事がビタウタスについて調べていた事実を知る。そして、一連の殺人事件はビタウタスによるものであると考えた。そのとき、息子のベネイが行方不明になったという連絡を受ける。警察による大規模な捜索が行われ、ギンタスも必死に息子のことを探した。しばらくしてギンタスの自宅が火事になっているという連絡を受け帰宅し、そこでベネイを発見する。

後日ギンタスは死体安置所の職員から1週間前から放置されている遺体をどうにかしてほしいという相談を受ける。その遺体は、なんとビタウタスであった。つまり犯人はビタウタスではなかったのだ。

真犯人の正体

次に命を狙われるであろうラザがひと気のない場所に避難するが、何者かに襲われ両手を拘束され宙につるされる。そこへギンタスが助けにやってくる。しかし、突然銃声が響き、わき腹あたりを撃たれてしまう。ギンタスを撃ったのはシモナスであった。

シモナスが一連の殺人を実行するに至った理由は彼の幼少時までさかのぼる。
1990年、ソ連から独立する直前のリトアニアにあるKGB中央司令部から極秘ファイルが盗まれる。そこにはリトアニアの裁判所や警察、政界にもぐりこんだKGBの工作員のことが記されていた。そのファイルを盗み出した女性が記者のビタウタスにファイルを高値で売ろうとしていた。それを突き止めたのが、当時KGBの工作員だったライモナス、シモニス、ユリウス、ラザ、そしてギンタスの5人。彼らは、その女性の家に押し入り彼女を殺し極秘ファイルを取りかえした。そのタイミングでビタウタスが家にやってくる。5人はビタウタスが女性を殺しファイルを奪ったうえで家に火をつけたかのように見せる工作を思いつく。

家に火をつける直前でギンタスはクローゼットに隠れていた少年の存在に気づき、こっそりと家の外に逃がしてやった。その少年こそシモナスであった。シモナスは、母親を殺された復讐のために大人になった今5人への復讐を行っている最中だったのだ。

話は現在に戻る。

シモナスはラザに液体燃料をかけ火をつけ殺してしまう。

続いてシモナスはとどめを刺すためギンタスに銃口を向け引き金を引こうとした。そのとき、警察署から抜け出したベネイがシモナスに銃弾を撃ち込んで殺した。

感想

上質なサスペンス

地方都市の警察署長を引退したのち政界進出をもくろむギンタス。そんななか彼の友人であり検事のライモナスが自宅で亡くなっているのが発見される。検事局のシモナスという検察官がわざわざ都会からやってきて捜査に加わることになる。その後もギンタスの知り合いが次々と何者かによって殺されていく異常事態に発展。一連の殺人事件の犯人は誰なのか?そして、犯人の動機とは?

連続殺人事件が次々と起こる刑事サスペンス映画で見ごたえがありました。連続殺人事件を扱ったこの手の映画は死体の見た目がエグイほど楽しいです。顔が半分吹き飛んだ死体とか首を切り落とされその代わりにヘラジカのはく製をつけられた死体などギョッとするビジュアルの死体が登場します。

ソ連の一部分を成していた頃のリトアニアが物語のテーマになっていて、その物悲しいストーリーも見ごたえがありました。今はリトアニアを愛し政治家を目指す主人公ギンタスですが、かつてはKGBの工作員として活動していました。その工作員時代の行いが今回の連続殺人事件の発端となっていて、心にズーンとくるやるせなさがあります。

ギンタスは不倫はするし、私的な理由で隠蔽はするし、清廉潔白な人間ではありません。ただ、工作員時代の子供を助ける姿に代表されるような良い人間としての側面もあります。善人か悪人かを決めつけられない生きた人間として描かれており、そこがこの主人公に惹きつけられる理由でもあります。

ラストは、ギンタスがシモナスに銃で殺されそうになったところで、ギンタスの息子ベネイが現れシモナスを撃ち殺してENDです。数十年前に助けた少年に今こうして殺されそうになり、「自分より強いものなら殺していい」と教えた実の息子がそこへ助けにやってくる。ギンタスがふたりの幼い子供に及ぼした影響が今こうして一点で交わります。あのとき子供のシモナスを助けなければ、自分の息子が人を撃ち殺すという重大なトラウマを背負うこともなかった。皮肉なオチに気持ちが沈んでしまいました。