映画「イビルアイ」のあらすじと観た感想を紹介します。
結末のネタバレがあるのでご注意ください。
作品情報
妹の病気療養のために家族と祖母の家を訪れた少女が恐ろしい体験をするホラー映画。
妹の謎の病気を治療方法を探す両親に連れられ祖母の家を訪れた10代の少女ナラ。そこで使用人として働くアビゲイルからかつてある村で幼い少女が魔女に血を吸われ病気にかかってしまった話を聞く。祖母のホセファはナラに対しておかしな言動で接してきたことからナラは祖母がその伝説に出てきた魔女なのではないかと疑い始める・・・。
2022年製作/100分/PG12/メキシコ
原題:Mal de ojo
あらすじ
祖母の家を訪れる少女
ギレルモとレベッカの夫妻は、謎の病気に苦しむ一番下の娘ルナとその姉ナラを連れ人里離れた場所にある古びた屋敷を訪れる。そこはレベッカの母ホセファが暮らす家だった。
レベッカとギレルモがルナの病気の治療法を探すため少しの間家を空けることになり、ナラはルナと祖母の家で過ごすことになる。
昔から伝わる伝説
ホセファの家の使用人アビゲイルがナラとルナに村の伝説を聞かせる。かつてその村には3姉妹がいた。永遠の若さを求める魔女に末っ子が血を吸われ病気になってしまう。姉妹は末っ子を助けるため魔法使いに力を借りることにした。願いを何でも叶えてくれるという神話上の生き物バッカの作り方を魔法使いに教わり、実際に作り上げた。
長女はその魔法使いの弟子となったが、次女は弟子になることを拒否した。そのあと、魔法使いが末っ子の血を吸っていた魔女であることが判明する。姉妹は、魔女を塩で退治するが、そのときにある呪いをかけられてしまう。妬みがふたりをむしばみ破滅に導く呪いだった。
バッカが末っ子の病気を治す代わりに、3姉妹の母親の命を奪ってしまう。魔女の弟子になることを拒否した次女は過ちをただすためにバッカを殺した。そのせいで、末っ子の病気は死ぬまで治ることがなかった。母の死をきっかけに長女と次女は仲たがいをした。
祖母は魔女なのか?
ナラはおかしな言動を見せるホセファが伝説に出てくる魔女ではないかと疑い始める。そして、ルナの足に血を吸われた跡ができていたことでその疑念が確信に変わる。ナラはルナを連れ家を飛び出すが、しばらくしてルナが地面に倒れこんでしまう。やがて、ホセファに見つかり連れ戻されてしまう。
その後、ナラは再びルナを連れて家から逃げ出した。そして、森の中で怪しげな儀式を行う人々の姿を目撃する。そこにはナラたちの母親レベッカの姿もあった。
ナラとルナは森の中をさまよい、次の日の朝を迎える。そこへ両親が車で駆け付け、ホセファの家に連れていかれる。
ルナの病状は回復しつつあった。それはレベッカが例の儀式を行い、バッカに娘の病気を治すよう願ったからだった。
ルナの異変に気付いた母
車で家に帰ろうと準備をしていたレベッカはルナの足にある傷跡を発見する。レベッカが家に戻りホセファにルナに何をしたのかと問い詰める。
ホセファはレベッカを花瓶で殴り倒した。ルナの血によって若返ったホセファが顔の包帯を外すと、その姿はレベッカと瓜二つだった。ギレルモは目の前にいる自分の妻がホセファであるとは気づいていない。
ホセファが魔女であると確信したナラ
ナラはホセファの家にあった昔の写真からホセファが本物の魔女であると考えた。そこで、ホセファが横たわるベッドに近づきその体に塩をかける。(実際にベッドにいたのはホセファではなくレベッカであった。)レベッカの体は塩によって焼けただれていく。
ナラは家族の待つ車に乗り込み、自分の家に帰った。
その後、ルナが医者に診てもらうと病気はすっかり良くなっていた。
ナラは夜中に目を覚まし、初潮を迎えていることに気づく。ナラはある部屋でバッカを発見し驚いた。そんなナラのもとに醜い化け物が現れる。それは人間の皮を脱いだホセファであった。ホセファはナラを抱きしめ、「お前は今日から大人になった。今日から本当のことを学び始めるんだよ」とささやいた。
ストーリー解説
本作はストーリーに関してわかりづらい箇所があるので疑問点を整理していきます。
伝説に出てくる三姉妹は誰?
ホセファの家で使用人として働く女性アビゲイル3姉妹の話をします。実はあの話はただの伝説ではなく実話でした。
魔女に弟子入りして若いままでいる選択をした長女はレベッカ
魔女に弟子入りすることを拒否しそのまま年を取ったのがホセファ。
魔女に血を吸われ病弱になったのが末っ子の(おそらく)テレサ。
冒頭ではレベッカはホセファの娘であることになっていますが実は二人は姉妹だったのです。
姉妹にかけられた呪いとは?
幼少期のレベッカとホセファは魔女を殺しますが、その死に際に「妬み」が二人を破滅に導くという呪いをかけられます。その妬みは、今現在もレベッカが若いままの姿でいて、しかもいい男(ホセファはレベッカの夫をやたらとほめている)と結婚して幸せに暮らしていることに対する年老いたホセファが抱く妬みです。
ホセファは終盤でレベッカをその娘ナラに殺させて、自分はレベッカになりすまし、その家族の一員となります。ホセファはレベッカとその家族が家にやってきたときからこの計画を企てていたのでしょう。
レベッカが娘の病気を治すために行ったことは?
娘のルナの病気を治すためにレベッカは黒魔術の儀式を行い、何でも願いをかなえてくれるバッカを作り出しました。こうして、ルナの病気は嘘のようによくなりました。バッカは願いをかなえる代わりに奪ってもいきます。バッカはルナの病気を治す代わりにその母親レベッカの命を奪ってしまいました。
レベッカはどうやって子供の血を吸っていたのか?
魔女が若さを保つためには子供の血が必要です。レベッカはどうやって子供の血を確保していたのでしょうか?冒頭でレベッカの住むマンションの子供たちが次々と病気にかかっていると示唆されています。つまりレベッカは自分の住むマンションの子供たちからひそかに血を吸っていたということがわかります。
感想
否応なしに大人になった少女
両親が下の娘ルナの原因不明の病気を治すため祖母の家に無理やりに連れてこられる少女ナラ。両親はナラとルナを祖母のもとに残し家を空けることになる。祖母はどこか不気味な雰囲気で、ナラに対して厳しい態度で接してくる。祖母が伝説に出てくる魔女ではないかと疑いルナを連れて家から飛び出すが・・・。
否応なく大人にならざるを得ない子供の不安感を描いたスリリングな一作です。本作が描くのは両親が不在の中、病弱な妹を恐ろしい魔女から救いだそうとする幼き少女の物語。
子供はみんな、いつか親の手元から離れ独り立ちしなくてはなりません。その独り立ちには十分な準備期間があるのが一般的です。しかし、親の急死などによって突然に大人にならなければならない子供たちもいます。本作の主人公ナラも両親によって祖母(魔女)のもとに取り残されてしまい、妹ルナを魔女から守るため自らが大人になる必要がありました。たった13歳のナラが親がわりとなり、必死に魔女から妹を守ろうとする姿には異様な緊迫感があります。また、ナラの感じていたであろう不安も観客にとっても共感しやすいものでした。それは誰しもが子供から大人になる移行期間で感じる「自分はちゃんとした大人になれるのだろうか?」という不安とリンクするからです。