「オファリング 悪魔の生贄」映画ネタバレ感想 親子の不仲が生んだ悲劇

映画「オファリング 悪魔の生贄」のあらすじと観た感想を紹介します。

結末のネタバレがあるのでご注意ください。

作品情報

ある家族が子供を連れ去る悪魔によって追い詰められていく恐怖を描いたホラー映画。

ある頼みごとのために疎遠気味の父(葬儀屋)のもとを妻と一緒に訪れたアート。父の手伝いで遺体の処理を行うことになるが、その体に閉じ込められていた悪魔の封印を解いてしまう。悪魔はアートの妻のお腹にいる胎児を奪うためその家族を次々と手にかけていく。

2022年製作/93分/アメリカ・イギリス・ブルガリア合作
原題:The Offering

あらすじ

葬儀屋の父を訪ねる息子

アートは妊娠中の妻クレアとともに葬儀屋の父ソールの会社兼自宅を訪れる。普段は疎遠の父に会いに来たのは父の家を担保にいれる承諾をもらうためだった。アートはビジネスに失敗したせいで銀行からの融資を受ける必要があったのだった。

ソールの会社で働く従業員のヘイミッシュによってひとりの男性の遺体が運び込まれる。その遺体がから衣類を脱がす仕事を任されたアートはひとりで作業に取り掛かる。胸に刺さったナイフを動揺しながらも抜き、首にかけていたペンダントを外すと、突然遺体の目が開く。その時停電が起きたためソールが駆けつける。アートは地面に落ちて砕けたペンダントをとっさに排水口に隠した。

呪文がびっしりと刻まれたナイフ

ソールは遺体の胸から抜かれたナイフを見つけ、ヨシルが恐ろしい禁忌に手を出したことを悟る。

ソールはハイムという学者にナイフに書かれた呪文について助言を求めた。ハイム曰く、悪魔を召喚・封印する呪文だという。ペンダントはあったかと聞かれたソールはなかったと答える。ハイムはペンダントがないのであれば遺体の中に悪魔はいないため心配はいらないと告げた。

一方同じころ、アートの妻クレアは邪悪な何かの存在を感じ始めていた。

アートのスマホにかかってきた電話を無断でとったヘイミッシュは、アートが父の家を担保にいれる承諾を得るため家を訪れたことを知る。ヘイミッシュはそのことをアートがいる場でソールに告げた。

家を担保にすることを父に頼む機会を伺っていたアートは、他者からいきなりバラされたことに動揺しその場を足早に去った。

ソールが悪魔に殺される

その夜、ひとりでいたソールは悪魔に殺されてしまう。アートは、父が死ぬ前に家を担保に入れる署名をしてくれたことを知る。

ソールの葬儀の日、アートは次第に様子がおかしくなり取りつかれたように円形の紋様を床に描いた。

ヨシルの妻がやってくる

ヨシルの遺体は、引き取る近親者が現れず霊安室に置かれたままになっていた。アートは、近親者を探すためヨシルの自宅を訪れた。玄関の扉にカギはかかっておらず、そのまま足を踏み入れたアートは、ヨシルが妻を生き返らせるための儀式で誤って悪魔を召喚していたことを知る。それは子供を連れ去るアビズーという悪魔だった。

一方そのころ、ヨシルの妻アイーダが夫の顔を見たいと葬儀屋にやってきた。クレアは、アイーダをヨシルの遺体がある霊安室まで案内した。実際のところアイーダの姿をした悪魔であるそれはクレアにヨシルのペンダントを燃やさせる。するとヨシルの体が燃え上がり、灰になってしまう。悪魔は逃げるクレアを追ってくる。

帰宅したアートは異変に気付き、クレアを抱き上げ家を出ようとする。しかし、クレアは忽然と姿を消してしまう。

悪魔と対峙するアート

困り果てたアートはヘイミッシュに連絡し、助けを求めた。家にやってきたヘイミッシュはさらに専門家のヘイムを呼んだ。

3人は悪魔を退治するための準備を始める。ヨシルの遺灰を集め、彼のナイフを手に取る。すると、突然悪魔が現れヘイムが首の骨を折られ死亡する。アートとヘイミッシュは悪魔が近づけぬように遺灰を円状にまきはじめる。しかし、途中でヘイミッシュが悪魔に連れ去られる。

防衛円のなかで呪文を唱えるアートのもとにクレアが現れる。クレアは悪魔に宙に浮かれさ窓から外へ連れ出されようとしていた。さらにアートが呪文を唱え続けると彼の体の中に悪魔が入り込む。アートはナイフをつかみ自分の胸を刺そうとするが、ナイフは風に飛ばされてしまう。そこへナイフを持ったヘイミッシュが現れる。アートはヘイミッシュの手をつかみ自分の胸にナイフを突き立てさせた。ヘイミッシュは円を出たことが良くなかったとアートにささやく。そのヘイミッシュは悪魔が化けた姿だったのだ。

アートが遺灰の円を出たことでペンダントに悪魔を封印できておらず、悪魔は胎児を連れ去るためクレアをアートに作らせた祭壇に誘い込んで襲った。

感想

親子の不仲が生んだ悲劇

妻クレアと一緒に葬儀屋の父ソールの家を訪ねたアート。ある日、葬儀屋に運び込まれた遺体に封印されていた悪魔を呼び起こしてしまう。悪魔はクレアのお腹にいる胎児を奪い取るため、アートやクレア、ソールを追い詰めていく。

悪魔ホラーとしてよくある作品の一つです。

「主人公やその家族が悪魔に食い物にされる」

「悪魔は人の姿に化け家族をじわじわと追い詰める」

「結界を張るために特殊な粉で線を引くという戦い方」

などなど、この映画何万回観たよ?という悪魔ホラーあるあるなシーンが続きます。

ジャケガリ君
ジャケガリ君

それでも、現実と幻覚が入り混じった白昼夢シーンなど、おっ!と思えるポイントもいくつかあり、悪魔ホラーをあまり見たことなければ楽しめると思います

そんな既視感たっぷりの本作ですが、ストーリーに関していえばなかなか興味深かったの
でここで解説していきます。

テーマは崩壊した親子関係です。この崩壊した親子関係が最終的に彼らの子孫にまで恐ろしい事態を招く様子を描いています。

悲劇の始まりはソールの葬儀屋にヨシルという男性の遺体が運び込まれたことです。その胸にはナイフが刺さり、青いペンダントが首にかかっていました。生前、ヨシルは自分の体に悪魔を閉じ込めるために胸に自らナイフを突き刺し、ペンダントに悪魔を閉じ込めたのです。

ソールはびっしりと呪文が描かれたそのナイフをみつけ、ヨシルが悪魔を体に取り込んだのではないかと疑います。そこでハイムという学者にナイフの呪文について助言を求めます。ハイムいわく、その呪文は悪魔を召喚・封印するものだといいます。続けて、「遺体はペンダントを身に着けていたか?」と聞くハイムに対し、ソールは「いいえ」と答えました。ハイムは「ペンダントがないのであれば遺体の中に悪魔はいないし、もしいたとしても火葬しなければ問題ない」とソールをなだめます。

ペンダントがないのであれば、と安心したソールは自分の疑念についてそれ以上追求することはありませんでした。

しかし、実際のところ遺体の中に悪魔はいました。遺体が身に着けていたペンダントはソールに見つかる前にアートがこっそりと隠していたのです。

ペンダントを床に落として割ってしまったアートは、父に見られぬようとっさにペンダントを隠します。失敗をしでかした子供が親に怒られないたにとるような行動です。ソールがクレアに「息子を怒鳴りつけずにもっと会話をすべきだった」と後悔を語るようにソールは威圧的な父親であり、アートはそんな父におびえながら生きてきたことが伺えます。

また、ソールもあのナイフが悪魔を封印するものであったことを息子に黙っていました。

お互いがそれらのことを正直に明かしていれば、早い段階でハイムに相談し犠牲者が出る前に悪魔を再び封印できたでしょう。

しかし、彼らがそれを怠ったがために、悪魔を野放しにして最終的にはアートの子供が悪魔に奪われてしまいました。

お互いに意見や気持ちをはっきり言いあえない意思疎通不足の親子が事態を悪化させていくというのが本作の物語です。

そしてこの話は現実世界の僕たちにとっても無関係ではありません。たとえば、健康診断で悪い結果が出ても、家族仲が悪いからそれを家族に黙ったまま病院もいかず突然亡くなってしまう、といった話。黙っていた本人側の問題もありますが、普段そっけない態度で接してくる家族に話しづらかったという周りの家族側の問題でもあります。こういう話は世の中に転がっています。

改めて自分と家族の関係を見つめなおさせてくれる映画でした。希薄な家族関係を描いた悪魔ホラー!ぜひご覧ください。