「DASHCAM ダッシュカム」映画ネタバレ感想 コロナ禍における迷惑系配信者の行く末は?


映画「DASHCAM ダッシュカム」のあらすじと観た感想を紹介します。

結末のネタバレがあるのでご注意ください。

作品情報

2021年製作/80分/アメリカ・イギリス合作
原題:Dashcam

ある女性がライブ配信中に体験した恐ろしい出来事を登場人物の手持ちカメラ視点で描いたPOVホラー映画。

ラッパー兼動画配信者のアニーは元音楽仲間ストレッチにイタズラする姿をネット上で生配信し始める。やがてそのイタズラがきっかけで、ある女性を指定の場所まで送り届けることになったアニーだったが・・・

あらすじ

迷惑系配信者によるドッキリ企画

ラッパーで動画配信者のアニーはコロナ禍の制限された暮らしにストレスをため込んでいた。そんなある日、アニーはかつての音楽仲間のストレッチにドッキリを仕掛けるライブ配信企画を思いつく。

そこで、住居のあるロサンゼルスからロンドンまで飛行機で向かい、ストレッチとその恋人の住む家にこっそりと忍び込んだ。

突然家を訪問しストレッチをたたき起こすドッキリを成功させたアニーはそのまま家にとどまりストレッチや恋人とのやり取りをライブ配信し続ける。しかし、失礼な態度が災いし家から追い出されることになってしまった。

それでもアニーはめげず、ストレッチの車を盗みだし彼のやっている食品のデリバリー業務を勝手に始める暴挙に出る。

怪しげな案件を請け負うアニー

しかし、食品を受け取るために立ち寄った店で店員から予想外の依頼を受ける。それは、どこか様子のおかしな老婆(アンジェラ)を指定された住所まで送り届けてほしいというものだった。大金に目がくらんだアニーはその依頼を承諾し、車にアンジェラを乗せて走り始めた。しばらくしてトイレを借りるために食堂に立ち寄ることになった。そこで、突然見知らぬ人物が突然アンジェラに襲い掛かる。アンジェラはその人物を人間とは思えない力で吹き飛ばした。アニーはパニックになりながらもアンジェラを車まで連れていきその場から逃げようとする。そこへ車を取り返そうとストレットがやってくる。

一刻も早くその場を離れたかったアニーは、アンジェラだけでなくストレッチも強引に車に乗せ発進させた。しかし、その途中にもアンジェラを捕えようとする集団が現れる。アンジェラはその集団と対峙する際に、宙に浮かぶなどの超自然的な力を発揮する。

アニーはアンジェラを狙う女を捕え話を聞くとその女はアンジェラの母親であること、老人のように見えるアンジェラが実際には16歳であることが判明する。その後、アンジェラの母親を名乗る人物はアンジェラに頭を吹き飛ばされ死亡する。

アニーとストレッチは近くの遊園地に逃げ込むが、そこにアンジェラが現れストレッチが殺されてしまう。

最終的にたどり着いた場所が偶然にも・・・

その後、事故で車を失いさまよい歩いたアニーはある豪邸にたどりつく。そこは偶然にもアンジェラを送り届ける予定の場所だったことが判明する。アニーがその家を探索していると突然目の前に多数の人間が現れ、それぞれが刃物で首を切ってその場に倒れていく。

アンジェラは化け物のような姿になり再びアニーの前に現れる。アニーは持っていた楽器でアンジェラを殴り殺した。

感想

コロナなんてくそくらえ

コロナ禍真っ只中を舞台に、どぎつい下ネタや人種差別発言を含むラップで視聴者を楽しませるライブ配信を行うアニー。元音楽仲間に対して行ったドッキリをきっかけに超自然的な力を持つ少女と少女を捕まえようとする集団との争いに巻き込まれていく。

傍若無人に暴れまわる主人公アニーの姿を見ることで、コロナ禍の行動制限やマスク着用義務で抱えたストレスを発散できるエネルギッシュな一作でした。アニーの迷惑行動に賛同はできなくてもどこかスカッとさせてくれるぬけの良さがこの映画にはあります。

主人公が魅力的

劇中に出てくる化け物(アンジェラ)の怖さというよりは、どんなに危ない目に遭おうとライブ配信を続けるアニーの奮闘ぶりがメインと言ってもよいかもしれません。特に車のダッシュボード視点から撮られるアニーがどんどんボロボロになっていくさまや極限状態でもラップをする不屈の魂に熱いものを感じました。アニー役の女性は現実でも音楽活動をしているアニーさんで、この方を主人公にキャスティングするセンスが素晴らしい。アニーは暴言や下ネタを連発する一見すると陽気で能天気なキャラに見えますが、アニーさんの顔つきから漂うメンタルの危うさや儚い存在感のおかげで、アニーというキャラの心の内まで知りたくなるような魅力的なキャラになっていました。

恐怖表現もそこそこ良い

主人公アニーが魅力的な一方で、怖さを求める人からするとあまり楽しめない映画になっているかもしれません。とはいえ、マスク越しに血がにじむアンジェラや、アンジェラが走って車に追いついてくる不気味な姿などギョッとする恐怖描写もちりばめられており、そこそこ怖がらせてくれます。

好みが分かれそうなポイントもある

POVホラーでは珍しくありませんが、何が起こっているかわかりづらい点は評価が分かれそうなポイントです。よく言えば臨場感があるといえますが個人的にはもっと落ち着いたカメラワークでじっくりと事象を捕えてくれた方が好みでした。またアンジェラの正体やアンジェラを狙う集団の詳細が明かされない点も好みが分かれそうです。この点に関して僕は、自分の中で想像を膨らませて楽しめる点でよいバランスの情報量だと感じましたが。

コメント欄に注目して再度鑑賞するのもアリ

ライブ配信中の視聴者が書き込む下品で不謹慎なコメント欄も見どころポイントの一つです。英語で書かれているのですべてに目を通すのは難しいですが、再度鑑賞する際はコメントに注目してみるのも面白いかもしれません。

コロナ禍が終息した今、あの時期を振り返るという意味でもぜひ見てほしい一作です。