「震える家族」映画ネタバレ感想 息子を失った母親の贖罪

映画「震える家族」のあらすじと観た感想を紹介します。

結末のネタバレがあるのでご注意ください。

作品情報

養子を迎え入れた家族に起こる恐怖を描いたホラー映画。

牧師のソクホとその妻ヒョヌには4人の子供がいた。しかし、そのうちの一人ハンビョルを水難事故で亡くしてしまう。夫婦は児童福祉施設から目に障害を持つイサクという少年を養子に迎え入れた。家族と一緒に暮らしはじめたイサクは、ハンビョルの霊が見えると訴えるようになり・・・。

2022年製作/114分/韓国
原題:The Other Child

あらすじ

養子を受け入れた家族

小さな村でキリスト教の牧師をつとめる夫ソクホとその妻ヒョヌ。夫婦には4人の子供がいたが、そのうちの一人ハンビョルを水難事故で亡くしてしまう。

そこで、目に障害を持つ少年イサクを養子として迎え入れることにした。

イサクを児童養護施設から自宅に連れて帰った夫婦は3人の子供たちにイサクを紹介する。

こうして、家族に迎え入れられ一緒に暮らし始めたイサクだったが、しばらくして人ではない何かの存在を感じるようになる。

さらに、イサク以外の子供たちも家に何かがいると感じ始めた。それはどうやらハンビョルの姿をした悪魔のようだった。

その話を聞いたソクホは主が見守っているから家に悪魔は入ってこれないと子供の話を否定した。

池のほとりにやってきたヒョヌは、ヨンジュンという名の青年に話しかけられる。ヨンジュンは近くの木を指さして、吊るされた女性の霊がみえるか?と聞いてきた。ヒョヌが見えないと言うと、あなたも自分と同じものを見ているはずだと無理やり十字架のネックレスを渡してくる。ヒョヌは帰り際にそのネックレスを捨てた。

イサクを嫌う長女

ある日の夜、イサクはハンビョルの亡霊を追って階段を降りていたところ、後ろから「悪魔め」と言われながらジュウンに押され階下まで落ちる。意識を失って病院に運び込まれるが、治療を受け意識は回復した。

次の日、イサクの暮らしぶりをチェックするため児童福祉会からふたりの職員がやってくる。職員はイサクの部屋に入った際、睡眠薬をみつける。イサクはいくら揺すっても起きる気配はなく、誰かがその睡眠薬を飲ませたようだった。

ここで、ハンビョルが亡くなったときの状況が明かされる。一家は池のほとりでピクニックをしていた。足が不自由で車いすのハンビョルのそばにいたヒョヌは、いつの間にか眠ってしまう。目を覚ますとそこにハンビョルの姿はなく、池の水面に車いすがみえる。ヒョヌが目を離している間に、ロックのかかっていない車いすごとハンビョルが池に落ち溺れてなくなってしまったのだった。

溺死に関する疑惑

牧師のソクホに連れられ、一家は教会にやってきていた。礼拝中のヨンジュンが首をつっている自分の母親の霊を見て発作を起こす。ジュウンはヨンジュンにむかって悪魔祓いの呪文を唱える。ヨンジュンはそんなジュウンの手をつかみ「お前が殺した子があそこにいる」と告げる。

それを聞いたヒョヌは自宅に帰った後ジュウンの部屋を漁る。すると、傷をつけられたハンビョルの写真を発見する。

ヒョヌはハンビョルが事故で亡くなったのではなく、ジュウンに殺されたのではないかと考えた。それをソクホに話すと、ハンビョルはお前のミスで亡くなったんだ、と責められた。

姿を消したことどもたち

その日の夜、ジュウン、イェナ、ハジュンは眠るイサクに向かって悪魔祓いを行う。目を覚ましたイサクはジュウンの持つ十字架を取り上げる。物音に気付いたヒョヌは、子供たちの部屋に行くがそこに子供たちの姿はなかった。

ヒョヌはソクホを呼び、ふたりは手分けして家の近所を探し始める。イサク以外の子供たちは教会で祈りをささげていたところを発見される。子供たちの言う通り、ヒョヌが家の物置を開けるとそこにイサクがいた。イサクはハンビョルと会話をしたようで、池に落ちたのはママのせいじゃないとヒョヌに伝えた。

ヒョヌはイサクを通じてハンビョルからのメッセージを受け取って以来、身近にハンビョルの存在を感じるようになる。また、人も変わったようにどこか様子がおかしくなってしまった。

そこでソクホはヒョヌを椅子に縛り付け悪魔祓いを行う。

池にやってきたヒョヌ

同じころ、ジュウンはイサクを近くの池に突き落とそうとしていた。ヒョヌは、椅子のひもを切り、池にやってくる。ヒョヌにやめるよう言われたジュウンはみずから池に入り溺れ始める。ヒョヌは、逡巡した後、池に飛び込みジュウンを引きあげた。しばらくして再び池に飛び込んだヒョヌは、水中でハンビョルの幻影を抱きしめる。そこへヨンジュンが現れヒョヌを助け出した。ヨンジュンはジュウンがハンビョンの車いすを押して池に突き落としたこと、イサクのことも池に突き落そうとしたことをヒョヌに伝えた。さらに、ヒョヌ自身もハンビョンの死を望んでいたと指摘する。

ヒョヌは子供たちを先に家に帰し、池のほとりにいるヨンジュンのもとに引き返した。そして、ヨンジュンの頭を石で殴り殺してしまう。

そのあとヒョヌは、自分が木の枝で首をつっている自分を見て驚いた。ヒョヌは家に帰り、ソクホに「(霊が)見えるようになった」と伝える。そして、怯える4人の子供たちに寄り添って「あなたたち“5人”を守る」と言った。ヒョヌには部屋の隅に佇むハンビョルが見えていた。

感想

母親の贖罪を描く

水難事故で息子を亡くした夫婦が児童福祉施設からイサクという少年を養子として迎え入れ一緒に暮らし始める。しかし、イサクが「亡くなった息子の霊が見える」と言い始め、ほかの子供たちはイサクを悪魔だと怯え始めた。やがて、子供たちの母親ヒョヌもハンビョルの存在を感じるようになっていく・・・。

本作は息子を事故で亡くした母親が罪悪感にさいなまれながら、やがて自分なりの救いを見出す物語。自分が目を離したすきに息子のハンビョルが池でおぼれ死んだことにヒョヌは罪の意識を感じていました。養子のイサクはハンビョルからのメッセージをヒョヌに伝えます。

「自分が池に落ちたのはママのせいじゃないよ」

この言葉のおかげでヒョヌは自分の中にあった罪悪感を払しょくし、最終的には完全にハンビョルが近くにいると確信します。

ヒョヌはハンビョルからのメッセージを受け取ってから、ハンビョルの霊がいると完全に信じるようになります。その姿は人が変わったように様子がおかしくとりつかれたかのようです。スピリチュアルに傾倒していく母親という点ではあの最恐ホラー「ヘレディタリー継承」を彷彿とさせます。

息子を失い、それを自分のせいだと苦しむ母親の姿を悪魔ホラーとして昇華させて描いた一作です。ジャンプスケア演出など刺激の強い恐怖描写はほぼなく、怖がれるホラーとしての魅力は薄いですが、じわじわと静かに追い詰めてくるような恐怖感はぜひ味わってほしいです。