「隣の影」は2017年のアイスランド・デンマーク・ポーランド・ドイツ合作のドラマ映画。
結末までのネタバレを含むのでご注意ください。
作品情報
監督: ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン
キャスト:
ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン
エッダ・ビヨルグヴィンズドッテル
シグルズール・シーグルヨンソン
ラウラ・ヨハナ・ヨンズドッテル
原題:Under the Tree
製作年:2017年
製作国:アイスランド / デンマーク / ポーランド / ドイツ
上映時間:89分
感想
※【重要なネタバレなしの感想】とその後【重要なネタバレを含む感想】が続きます。
今回は「ジャケ借り」ではなく、面白いと評判だったのでレンタルしてみました。・・・これは確かに面白い!
隣人トラブルものは観客にとっても身近な問題なのでのめりこんで観てしまいますね。バルドウィン、インガ夫妻の庭に生えた木が隣家に影を作ってしまい、その木を剪定する・しないで揉めて、お互いの家への嫌がらせ合戦が展開。めちゃくちゃテンポもよくどんどん話が悪化していくのでそりゃ面白くないわけがない。セコイ嫌がらせからはじまり、やがてある生き物を使ったすげぇ嫌な復讐に発展。ここは誰もが語りたくなると思われるパンチの効いた場面ですね…。とにかくエグイ。そのあとの、オチの切れ味も最高で観てよかったなとかなりの満足感を味わえた映画となりました。
一方、この「隣人トラブル」パートと並行して、ある別の夫婦の「離婚話」も描かれています。この夫婦の夫の方(アトリ)がバルドウィン、インガ夫婦の息子です。アトリは自宅にて、ひとりでアレしていたところを妻のアグネスに見つかってしまいます。しかも最悪なことに、この時のオカズが元恋人との営みを撮影した映像だったのです。それを見たアグネスは夫の浮気に激怒し、家から追い出してしまいます。(実際にはアグネスと付き合う前に撮影された映像のため浮気ではないらしいのですが・・・)冒頭から思わず笑ってしまう修羅場を見せてくれてありがとう。それにしても最初から飛ばしまくりな映画ですね。
こうして家を追い出されたアトリが絶賛隣人トラブル中の両親のもとに身を寄せることに。アトリとアグネスの間には娘がひとりおり、離婚を進めたいアグネスとそれを何とか阻止したいアトリの「離婚話」が「隣人トラブル」と並行して語られていきます。正直、この「離婚話」を入れ込む意図が最初はイマイチ掴めませんでした。並行するふたつの話が最終的にどう合流するのかが全然わからないというか。その必要性がわからないので「離婚話」の方は真剣に観る気にならず多くの場面で退屈に感じました。
※重要なネタバレを含みます
しかし、並行していた二つの話がひとつになるラストまでみると、どういうテーマをやろうとしているのかがわかってきました。これは隣人問題が主題というよりも親の犠牲になる子供の話を描いているのではないでしょうか。両親の隣人トラブルに巻き込まれたアトリが木の下敷きになり病院送りになるのが一つ目の話。もう一方の話もアトリとアグネスが揉めて、小さい娘が振り回されています。やたらと性にまつわる描写や設定がでてくるのも性行為の結果として生まれてくる子供が重要なテーマになっているからだと思います。にしても、アトリたちの子供がかわいそうで…。自立した大人なら親から距離を置くこともできますが、自活できない子供はどうすることもできず。親の犠牲になるのはアトリも同じですが、正直彼には同情できない…。隣人トラブルに巻き込まれることになったそもそもの原因は彼が妻に隠れて元恋人とアレしているビデオをみていたからで…。
親子の関係に限らず、大切な関係の人と同じ屋根の下で暮らすことの厄介さを強く感じました。隣人トラブルの発端となる人物はインガとエイビョルグの2人。インガの夫・バルドウィンは別に木の剪定ぐらいやればええやん的スタンスで、エイビョルグの夫・コンラウズも庭に隣の木が影を作ることなど気にもしていませんでした。しかし、それぞれの妻がお互いにやりあってる中、次第にそこへ加勢していかざるを得ない展開になってしまいます。そりゃ、自分の配偶者が隣人ともめているときに黙ってみているわけにはいきません。同じ家に住む人が誰かと揉めたら嫌でもそこへ関わっていかねばならないというのは非常に厄介なものです。これまでの話とは少し違いますが冒頭でアトリがひとりでアレしている場面もある意味同じ屋根の下で暮らすことの厄介さを現していると言えますねwやっぱり一人暮らしは気楽でいいなあと思える映画でした。
総評
ストーリーはシリアスですがところどころで笑える場面もあります。たとえば、アトリとアグネスが参加した住民会議で住民が言うことを全然聞いてくれず司会役が困り果てる場面とか。あと個人的に好きなのは、アトリが元恋人のところに行って恋人時代のビデオを一緒にみるところ。アトリがいまだにそういうビデオを削除せずに持っていることについて怒りつつ、「こういうことあったなあ」と純粋にノスタルジックなものとして見ているところも思わず吹き出しそうになってしまいます。あと、細かいところですがコンラウズが犬のはく製をもって乗り込んでくるシーンで、玄関からカチコチの犬がヌッと姿を見せるところ。隣人の犬をはく製にしてしまうという恐ろしいシークエンスの中にこういうブラックな笑いを入れてくるあたり、なかなかの演出力ですね。
というわけで評価は9/10としました。
ストーリー紹介
アトリはある行為が原因で妻のアグネスに浮気を疑われ、家を追い出されてしまいます。仕方なく、アトリは両親の住む家に身を寄せることになります。
一方その頃、アトリの両親は隣家の夫婦とトラブルになっていました。
アトリの両親の家には1本の木が生えていました。その木が隣家の庭に影をつくってしまうため、木の剪定をしてほしいと頼まれますがアトリの母(インガ)がそれを拒否しました。
すると後日、自宅に停めてあった車のタイヤがおそらく故意にパンクさせられます。証拠はなかったものの隣人がやったと判断し、文句を言いに向かいます。
これ以降、お互いの家のものを壊すなど、嫌がらせがエスカレートしていきます。
そんなある日、インガが大切にしていた猫がいなくなってしまいます。
このままいけば、隣人は直接木を切ってしまうのではないかと考え、アトリが庭にテントを張り夜間見張りをすることになりました。
インガは猫の仕返しとばかりに、隣人の飼う犬を施設に連れ込みはく製にしてしまいます。
それを知った隣人の夫(コンラウズ)が夜にこっそり庭に侵入してきてと木を切り始めます。それに気づいたアトリの父(バルドウィン)はコンラウズに掴みかかります。その拍子に切れかかっていた木がアトリのいるテントに倒れていきます。
アトリは救急車で病院に運ばれます。
バルドウィンは隣家に侵入しコンラウズを殺そうとします。もみ合いになったふたりは深い傷を負いその場に倒れ動かなくなってしまいます。
インガが自宅にいたところ、飼い猫が家に帰ってきました。
おわり
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