「風鳴村」映画感想(ネタバレ)犬鳴村とは関係ないオランダ製スラッシャーホラー映画

「風鳴村」は2016年のオランダ製ホラー映画。

結末までのネタバレを含むのでご注意ください。

作品情報

監督:ニック・ヨンゲリウス

キャスト
シャーロット・ボーモント
ノア・テイラー
パトリック・バラディ
フィオナ・ハンプトン
アダム・トーマス・ライト

原題:The Windmill Massacre

製作年:2016年

製作国:オランダ

上映時間:83分

感想

オランダならではのスラッシャー映画。

世界で有名なオランダの歴史ある風車巡りの観光バスツアーを楽しむ一行だったが、エンジントラブルにより車内で一夜を過ごすことに。しかしそこには、ある曰くつきの伝説の風車がひっそりとたたずんでいた…。

※【重要なネタバレなしの感想】とその後【重要なネタバレを含む感想】が続きます。

本ブログでは先月あたりから「心の底から面白いと思えた映画」のみをレビューするという方針にしました。しかし、それだとあまりにもコンテンツ不足になってしまうので、基準を少し緩めて「そこそこの出来の映画」もレビューしていくことにしました。このことをなぜ「風泣村」の記事で宣言するのか?それはこの映画が、まさにそういう「そこそこの出来の映画」だったからです。ダメなところも多いですが、個人的に良かったと思えた部分もあったのでそこを中心にレビューしていきたいと思います。

そして、書かずにおれないのは本作と日本のホラー映画「犬鳴村」の関係ですね。タイトルはもちろんジャケットの売り文句にも「犬鳴村」の話題に続け!とか、実録!恐怖の村シリーズとあり、あたかも関連があるように感じられてしまいますが、実際には何の関係もありません。ただの便乗であります笑。都市伝説つながりでも、村つながりでも、ありません・・・。

オーストラリア人のジェニファーは、とある事情によって身分を偽ってオランダで生活を送っていた。しかし、身分詐称がバレて、逃げ場を探していた彼女は、偶然ながら風車巡りをするツアーバスを発見。ツアーへの参加にはチケットが必要だったが、なんとか嘘を付きバスに乗り込むことに成功。ツアーの参加者にはさまざまな国籍・職業の人々がいて、ジェニファーは彼らとオランダの風車をめぐることになります。

僕は、上記のような、初対面の人間同士が一箇所に集まって交流を少しずつ深めていって…、というシーンが大好きです。こういうシーンを見ているだけで高揚感がどんどん高まり、テンションが上っていきます。その場面の出来とかは関係なく無条件で・・・笑。何らかの大事件が起きるのが映画だとすると、それぞれに事情を抱えた人々が一箇所に集まるシーンというのはこれから大事件が起きることを予感させるセットアップシーンなのでワクワクしてきます。本作もそこに関してはやはり超絶テンションが上りましたが、観終わったあとに思うのは、この場面が面白さのピークであったという気がしないこともない、ということ・・・。

一箇所目の風車の見学を終え、バスは次の場所に向かっていました。ジェニファーはバスの前に人影があるのに気づき、バスの運転手・アーベに向かって、止まって!と大声をあげます。バスは急停止し、ジェニファーが外へ出て確認しますが、バスの下はもちろん、その周りにも人らしき人は見当たらない・・・。気を取り直して次の目的地に向かおうとバスを発進させますが、急停車したせいなのかバスは故障し動かなくなってしまいます。

バスは一向に動く様子がありません。それどころか突然バスが傾き始め、そばにあった川に沈んでしまいます。乗客は沈む前に脱出して無事でしたがカートという少年が怪我をしたため、みんなで近くにあった風車を目指すことに。風車の近くには教会のような場所があったのでとりあえずそこで休むことになりました。

やがて、ツアー参加者が一人になったところを狙って大きな鎌を持った化け物が現れ、ひとり、また、ひとりと、殺されていきます。その化け物、元はヘンドリックという製粉業者の男でした。人間を捕らえては悪魔に捧げる代わりに、風のない日にも風車が回るよう悪魔に力を借りていたのでした。そのことが村人にバレて、ヘンドリックは風車小屋ごと燃やされてしまいます。悪魔は焼け死んだヘンドリックを地獄の門番とし、罪人狩りをさせていました。

今回の殺人鬼・ヘンドリックの設定はなかなか新鮮で面白いですね。こんなんオランダが舞台でないと思いつかない設定でしょう。グシャグシャの顔とか造形自体も不気味な雰囲気が出ていてナイスですね。風車の動くギミックを細かいところまで見せてくれるシーンはそれ自体が興味深いし、オランダ映画ならではという感じがして良い。


※ここから重要なネタバレを含みます


ツアーの参会者は少年・カートを除いて全員が何らかの罪を犯した罪人でした。ジェニファーは家庭内暴力を振るう父親を焼き殺しています。罪人ばかりがツアーに集まったことや、風車小屋の前でツアーバスが故障したことは偶然などではなく、悪魔に仕える運転手兼ツアーガイドのアーベがそうなるように仕組んでいたのでした。

ツアー客たちそれぞれの罪がどんなものなのか、そして、実際にその場面をフラッシュバックとしてみせてくれる場面はやはりそれなりに面白く惹きつけられる要素です。

ヘンドリックはツアー参加者たちを殺し続け、残ったのはアーベを除けば、ジェニファーとカートのみ。ヘンドリックを倒すため二人は協力してガソリンを風車小屋に撒き、火をつけます。風車小屋が燃えていくなか、ヘンドリックは苦しむ様子を見せはじめ、決着したかのように思われました。しかし、実際にはヘンドリックはまだ生きており、ジェニファーを鎖鎌で殺してしまいます。

ここから後日談が語られます。アーベは風車を巡るツアーを続けており、例の風車小屋へ罪人たちを送り届けていたのでした。

ここでエンディング。

こういう殺人鬼モノの映画ではどうしてもゴア描写を期待しますが、ひとりひとり違う殺し方で、それなりにグロい死に方を見せてくれます。ただ、中にはゆるい死に方をする人もいて、なんか死に方の描写の力の入れ方にバラツキがあるなと思ったりもしました。はじめの何人かはグロいのに後半になるほどマイルドになっているような気も。最後に死ぬ一応の主人公ジェニファーの死に方は唐突でショッキングさがあり良かったのですが。

スラッシャーホラーとしては不思議と恐怖感はあまり感じません。これは、単純にキャラの描写が薄いから感情移入があまりできなかったせいなのかなと思います。全員とは言いませんが、主人公とあと何人かはきちんとキャラに深みを持たせる描き方があっても良かった。

総評

個人的な嗜好ではありますが、初対面の人間同士が一箇所に集まり交流を深めていくシーンがあるので、序盤はかなりワクワクしながら観ていました。殺人鬼の設定もオランダならではという感じでいままでにないタイプで新鮮に感じました。殺人鬼自体の造形も結構おどろおどろしい感じでいいですね。こういうタイプのホラーにおいて過激なゴア描写というのを期待してしまいますが、これに関してはそこそこかな、という感じです。目を背けたくなるような良い殺し方もあれば、退屈な殺し方もある。キャラ描写が薄めなことで殺人鬼に襲われるときの恐怖感があまりでていないのは残念。

犬鳴村に便乗している点は置いといて、そこそこオススメできるかなと思います。とくに、オランダならではのホラーという点が個人的に評価できるポイントですね。

というわけで評価は7/10としました。

参考サイト:ゲオ宅配レンタル


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