「LUCK-KEY/ラッキー」映画感想ネタバレ(8/10点)『鍵泥棒のメソッド』の韓国版リメイク

今回は「LUCK-KEY/ラッキー」を鑑賞しました。

あるきっかけからふたりの男が相手と入れ替わって生活することになる、なりすましコメディ映画。

適度に笑え、適度にハラハラできる作品です。

個人的な評価は8/10点です。

作品情報

監督:イ・ゲビョク
出演:ユ・ヘジン、イ・ジュン、チョ・ユニ、イム・ジヨン
原題:LUCK-KEY
製作年:2016年
製作国:韓国
リリース:2017-10-04
上映時間:112分
映画サイトでの評価:「IMDB」6.9/10点、「フィルマークス」3.8/5点。

ストーリー紹介

ストーリーの流れを知りたい方はこちらをクリックしてください。(ネタバレを含みます)
チェ・ヒョンウクは銭湯で足を滑らせ頭を強打し意識を失ってしまう。

その場に居合わせた人間の中にユン・ジェソンという男がいた。役者として芽が出ないことに悩んでいたユンは自殺を図る寸前の精神状態だったが、なんとか思いとどまり銭湯にやってきていた。

その身なりからチェが金持ちであることを事前に知っていたユンは、チェが転倒時に落としたカギでロッカーを開け、服やその他の持ち物を身に着け銭湯を出ていく。

一方、チェは頭を打ったせいで記憶喪失になり、しばらくの間入院生活を送っていた。自分が誰かもわからないチェは、ユンが彼のロッカーのカギを置いていったことから自分のことをユンであると思い込んでいた。

その後、チェは退院することになるが、入院費を持ち合わせておらず、その場に居合わせた救急隊員の女性カン・リナに立て替えてもらうことになった。チェは、ユンの家に住みながら、リナの母親が切り盛りする飲食店で働かせてもらうことになる。

ある日、チェはユンの家のカレンダーのある日に、時刻と駅名が書かれているのを見つける。少しでも記憶を思い出したいチェは当日に時間通り駅に行くと、車に乗せられドラマの撮影現場に連れていかれ、何もわからないままドラマの役者として演技をさせられる。チェは、自分の職業が役者であると考え、演技の練習を重ねていく。そしてkある日の撮影でアクション演技の上手さが認められ、出番が増え、人気俳優になっていった。

頻繁に食事をするカンと恋仲になりつつあるチェだったが、ある日、急に記憶が戻り自分が誰であるかも思い出す。

チェは、ユンが自分になりすましたことも理解し、ユンがマンションの一室でソン・ウンジュという女性と食事をしているところに押しかける。チェを目の前にしたユンはある理由から必死にソンを守ろうとする。ユンはチェが暗殺者で、ソンを殺そうとしていると思っていたのだった。

ソンがある証券会社の悪事を内部告発しその証拠となるデータをもって逃げたことで命を狙われていること、そして証券会社が裏社会では名の通った暗殺者チェを雇いソンを始末させようとしていることをユンはチェの家で暮らす中で知っていた。

チェは、自分はソンを殺すつもりはないとユンに説明する。暗殺者として殺人依頼を受け、ターゲットを殺したふりをしてその場面を見た依頼主を納得させ、その後ターゲットの逃亡を手助けするのがチェのやり方だった。

チェは、ユンもソンと同様、証券会社の暗殺ターゲットになったと告げる。証券会社側はチェを装ったユンによって一向にソンの暗殺が実行されていないことにしびれを切らし、新たな暗殺者を雇いソンだけでなくユンまでも殺させようとしていたのだった。しかし、証券会社側が新たな暗殺者だと思って依頼した人物は、別名義のチェであった。

そこで、チェは3人とも証券会社から二度と追われない方法を思いつく。それは、証券会社の人間の前で、まず“暗殺者”ユンがソンを殺したように見せかけ、不正の証拠が入ったUSBメモリを証券会社側に渡す。そして、新たな暗殺者チェが現れ、ユンを始末しようと格闘しているところで、ソンが上からコンテナをチェとユンのいる場所に落とし、死んだように見せかける。

そして計画当日。チェはカンにもう会えないと別れを告げたあと、“暗殺”現場となる倉庫に向かう。途中、チェを追ってきたカンが乱入するトラブルはあったものの計画はみごと成功。

チェは、出演していたドラマの追加撮影のためカンと現場にやってくる。チェは、愛する相手に別れを言うシーンの撮影で、アドリブで間接的にカンに愛の告白をする。

そのあとも役者の仕事を続けていたチェはユンと共演することになる。

感想

本作は2012年の内田けんじ監督作『鍵泥棒のメソッド』の韓国版リメイクです。

自殺を考えるほどに追い詰められていたユン・ジェソンは銭湯で転倒し意識を失ったチェ・ヒョンウクのロッカーのカギを自分のものと入れ替え、チェ・ヒョンウクの衣服や持ち物を身に着け銭湯を出ていく。一方、チェ・ヒョンウクは頭を打ったせいで記憶喪失になり、自分をユン・ジェソンだと思い込んでいた。お互いが相手と入れ代わり生活を始めるなか、ユン・ジェソンはチェ・ヒョンウクがある女性を監視していることを知り・・・。

殺し屋で金持ちの男、チェ・ヒョンウクと、無名役者で貧乏な男、ユン・ジェソン。ふたりの男がお互いに成り代わり生活を送るなかで起こる出来事を笑いとスリル込みで描いた、なりすましコメディ映画です。

・殺し屋の男チェ・ヒョンウク

本作は、チェ・ヒョンウクと、ユン・ジェソンの二人のパートが並行して描かれる構成です。

ということでまずはチェ・ヒョンウクのパートから紹介します。

記憶喪失となったチェ・ヒョンウクは、ユン・ジェソンとして生活しながら身の回りにあるヒントをもとに記憶を取り戻そうと行動し始めます。そんななか、「自分ではそんなつもりではないのに、あれよあれよという間に成功を収めていく姿」がコミカルに描かれます。たとえば、体で覚えていた殺し屋としてのスキルが発動し、働いていた料理屋で調理パフォーマンスや凝った料理を客に提供し人気店員になっていくシーン。大仰な演出で彼の包丁さばきシーンが披露される場面は思わずほおが緩むこと間違いなしです!さらに、彼が俳優の仕事でアクションの上手さが認められ、ものすごい勢いでスター俳優になっていくさまも痛快です。そもそも俳優の仕事をするきっかけがユンの家にあったカレンダーに書き込まれたメモをみて駅に行ったことでした。演技経験もないため監督の指示とはかけ離れためちゃくちゃな演技をするんだけど監督から「逆にいいね!」みたいに評価されて、気に入られていく。もとは端役だったのが主役級のキャラを演じ、視聴者からのクレームで死んだはずが次の回で生き返ったり、ついには完全に主役の座につく快進撃とドラマの無茶苦茶なシナリオ改変が非常に楽しいあたりです。

チェ・ヒョンウクの魅力はやはり彼を演じた役者ユ・ヘジンさんに依る部分が大きいです。そもそもの顔つきがいいんですよね。不器用そうな面構えから繰り出される繊細な料理、髪を上げた時のいかつい顔に対し前髪をおろしているとき醸し出される柔和な雰囲気など、そのギャップがユーモラスでチェ・ヒョンウクの登場シーンはほぼニヤつきながら見ていました。そのほかにも、料理シーンでの決め顔ほか、キス待ち顔、照れた顔、石を思い切り川に投げる時の笑顔、など挙げればキリがないほど魅力的な表情を見せる素晴らしい俳優です。

・売れない役者ユン・ジェソン

つづいて、もう一人の主人公ユン・ジェソンを紹介します。

ユン・ジェソンは俳優として芽が出ず貧乏な暮らしをしていて、自殺一歩手前のがけっぷち状態。そんななか、ラッキーなことに超金持ちな男チェ・ヒョンウクとして生きる機会を得る。チェ・ヒョンウクが監視していた上階の女性ソンは証券会社の不正を暴いたことから命を狙われていることを知り、殺し屋から彼女を守り抜こうと奮闘する姿が描かれています。

彼女を守ろうとすると書きましたが、単に下心で近づいているように見える部分もあって、いまいち本気度が伝わってこず見ていてハラハラしづらいのが難点ですね。

とはいえ、こちらのパートは謎に包まれたチェ・ヒョンウクの正体や彼が女性を監視する目的を解き明かしていく役割もあって、その点に注目すると楽しめると思います。隠し部屋にズラッと並ぶプロの殺し屋感あふれるグッズ。女性が自分と同じマンションの住人だと知り、部屋の特定を試みるシーン。女性が刃物を自分に刺して倒れるという奇行とその伏線回収。そして、警察官かと思ってたら実は殺し屋で、でも実際は…という3段構えで明かされるチェ・ヒョンウクの正体。このように観客の予想を裏切る仕掛けが数多く用意されており、おっそうきたか!と何度も驚けるようになっています。

・どういうストーリー?

ふたりの男の話がそれぞれ別々に語られる時間が長く、映画全体で何を言っている物語か分かりづらかったので、ここでは本作がどんな物語だったかを僕なりに紹介します。

チェ・ヒョンウクは、自分が暗殺者であるということがカン・リナにバレて幻滅されてしまいますが、最終的にはふたりは恋仲になります。ユン・ジェソンも同様に自分が警察官ではないことがソン・ウンジュにバレますが、ふたりは恋仲に。

チェとユンに共通するのは、他人になりすましてはいたが、相手の女性に対してとる行動や好きという気持ちは本心からくるものだったこと。女性側も相手が誰かというところは横において本心からくる行動の部分を見て好きになったといえます。

このことはラストシーンでうまく象徴していて描かれています。チェ・ヒョンウクがドラマの演技中にカン・リナに愛の告白をする場面ですね。このときチェは、自分ではない他人を演じている(=なりすましている)けど、彼がカン・リナに向けて発するセリフは本心です。一方カンも他人になりすましているチェの愛の告白を彼の本心としてとらえOKを出します。

というわけで、この映画は、「好きな相手に自分の正体を偽っていた人間が真の正体に気づかれるが、その人を好きだという気持ちに偽りはないことが相手にも伝わり見事結ばれる」話だと僕は受け取りました。

まとめ

適度に笑えて、適度にハラハラできる佳作なりすましコメディという感じです。

ふたりの主人公の物語を並行して描いていますが、それぞれテイストが異なるので、飽きがこないのもいい点ですね。

ただ、ユン・ジェソンのパートは笑いも少なく、かといってそれほど大きな危機に直面するわけでもないので若干眠くなったりもしましたが…。

というわけで評価は8/10点としました。

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