「貪る。」映画感想(ネタバレ)気が滅入るとはこのこと

今回は2020年11月11日にリリースされた「貪る。」を鑑賞しました。

異国からニューヨークに出稼ぎにきたルルドが、バイト先のレストランで霊現象に悩まされ…というホラー映画。

非常に気が滅入る映画でしばらく気分が落ち込むほどの強烈な映画です。

さて、本記事の前半は、あらすじ・スタッフ・キャストの紹介をします。そして、後半の「ストーリー紹介」「感想」へと続きます。

「ストーリー紹介」「感想」コーナーでは、ネタバレなし・ありで分けています。ネタバレを避けたい方はネタバレなしの部分を見ることをおすすめします。

ツイッターやってます

あらすじ

ニューヨークシティのとある古いレストランで女性の遺体が発見された。彼女は病気の息子の手術費を稼ぐため、出稼ぎにやってきたシングルマザーだった。古いレストランで掃除婦として働くが、人々は彼女を都合のいいようにしか扱わず給料もやりがいも“搾取”される日々を過ごしていた。やがてレストラン内で不可思議な出来事が起こりはじめ…。

スタッフ・作品情報

監督:グレッグ・オリヴァー

原題:Devoured

製作年:2012年

製作国:アメリカ

上映時間:89分

キャスト

マルタ・ミランス
カーラ・ジャクソン
ブルーノ・ジョイエッロ
タイラー・ホリンガー

映画サイトでの評価

海外の映画サイト「IMDB」での評価は10点中5.4点(1525件の評価)。

ストーリー紹介

※まずは重要なネタバレなしで行きます。

・ルルドは金を稼ぐため故郷のエルサルバドルから離れニューヨークのレストランで働いている。

・出稼ぎの理由は、難病の息子・オリヴァーの手術代を稼ぐため。

・ルルドはレストランのオーナーや客から様々なハラスメントを受ける。

・それでも「手術台が稼げるまでは…」となんとか我慢しながら、働くルルド。息子との電話での会話を唯一の心の支えにしていた。

・彼女はハラスメントのストレスからかレストランで幻覚や幽霊を観るようになる。

・それまでルルドを直接は襲ってこなかった幽霊だったが、その日はルルドに向かって迫ってくる。

・ルルドは、二階の階段上にある窓から逃げようとするが、霊に足をつかまれ階下に落ちて死亡。


ここから重要なネタバレあり


・警察の捜査が入り、驚きの真相が明らかになる。

・ルルドは、ハラスメントをしてきたレストランのオーナーや客を殺し、冷凍庫に隠していた。動機はその人たちから金を奪い息子の手術代とするため。

・しかし、オリヴァーはすでに死亡しており、ルルド自身もそのことを彼女の母親から聞かされてた。

・ルルドはショッキングな事実を受け入れることができなかったのか、息子が死んだという事実を記憶から消し去り、無意識にもう一人の人格を作り出したうえで人を殺し金を奪いそれを仕送りしていた。

ここでエンディング。

感想

※まずは重要なネタバレなしで行きます。

非常に気が滅入る映画です…。

はじめからおわりまで、「あまりにも」な境遇の主人公をひたすら見せられ観るのがツライ…。観終わった後深いため息が出てしまいました。ホラー的演出は、一般的なホラー映画と見せ方が少し変わっていて(オチを見れば理由がわかる)これはこれでよい。

過酷な日々を送るルルド

序盤はルルドが金を稼ぐために一生懸命レストランで働く姿が描かれます。閉店後の掃除を一人でやっていて、これがなかなかの重労働でツラそうです。バイトが終わり、地下鉄で家に帰るときも時間帯のせいか、ほかに乗客はほぼおらず、駅もガランとしている。なんというか、非常にうら寂しくルルドが孤独な日常を送っているんだなと思い知らされる。バイト中、レストランで談笑しながら食事を楽しむ客と、それをみているルルドの対比をえがくことでさらにその孤独感を強調して描いています。ある日、ルルドが誰かと酒を飲みながら談笑していたかと思うと、それはルルドの妄想だったと明らかになる…。バイト先の上司ふたりや店にやってくる客の中にも超イヤな奴がいて、そんな連中にハラスメントを受けてもお金のために耐え続ける。ルルドのあまりにも過酷な現実が容赦なく描かれています。

ホラー描写は王道ではないが結構いい

中盤あたりから幽霊を見る頻度が増していくルルドですが、このホラー演出が結構良い。ジャンプスケアは抑え目。どちらかというと淡々と、シュールな見せ方。布に包まれた人間が階段から落ちてくるシーンが個人的にはお気に入り。あとは、ルルドがもう一人の自分を目撃する、ナイフが机からひとりでに動く、ロッカーに入れてあった服が血まみれだった、といった「それどういう意味???」と疑問がわいてくる不可解な演出が続き、緊張感を途切れさせません。普通のホラーなら霊の正体が中盤あたりで明かされ、それ以降はその霊になんとか対処することに時間が割かれることが多いと思いますが、この映画はその過程を飛ばしてオチで一気に説明されています。霊の正体が明かされた時点で正直大体の映画は怖くなくなってしまいますが、本作はその弱点をうまくカバーしています。やはり、どういう存在かわからないからこそ霊は怖い!


ここから重要なネタバレあり


ラストは衝撃

まったく救いようのないラストがかなりキツイですね。ルルドの一生を考えると居たたまれなくなり思わずため息が出てしまいました。また、不可解だったホラー演出もこのラストを見ると「そういうことだったのか」と、すっと理解できるようになっています。

少し細かいところですが・・・。警察がルルドの母への聞き取りをして真相が明かされるわけですが、とてもうまいと感心した箇所がありました。ルルドの母が話した言葉を警察官が英語に通訳するから間が開くわけですがそれが「タメ」になっています。「少しずつ真相が明らかになる感じ」を無理なく自然にやっていてとてもスマートだと感じました。

総評

ひとこと。気が滅入る映画です。万全な体調の時に観た方がいいかもしれません。ホラー的には少し描写が弱いですが、シュールさが個人的には好みでした。

見て損はない一作です!

ということで、評価は10/10としました。

参考サイト:ゲオ宅配レンタル

コメント