今回は2020年10月2日にリリースされた「ロード・インフェルノ」を鑑賞しました。
車であおった相手がやばいサイコパスだったというスリラー映画です。
緊迫感のあるシーンが多く、スリラー映画としての出来はなかなか。ただ、主人公の行動にイライラする映画ではあるので、そのあたりで評価は分かれそうです。
さて、本記事の前半は、あらすじ・スタッフ・キャストの紹介をします。そして、後半の「ストーリー紹介」「感想」へと続きます。
「ストーリー紹介」コーナーでは、ネタバレなし・ありで分けています。ネタバレを避けたい方はネタバレなしの部分を見ることをおすすめします。
あらすじ
ハンスとディアナ夫妻は、娘たちを連れて車で実家へ向かっていた。出発が遅れ、苛立っていたハンスは前方をゆったりと走る車をあおるように運転し…。
スタッフ・作品情報
監督:ルドウィック・クラインス
原題:Bumperkleef
製作年:2019年
製作国:オランダ
上映時間:86分
キャスト
ユルン・スピッツエンベルハー
アニエック・フェイファー
ウィレム・デ・ウルフ
映画サイトでの評価
海外の映画サイト「IMDB」での評価は10点中5.8点(1020件の評価)。
国内大手レビューサイト「フィルマークス」では5点中3.3点(30件の評価)。
ストーリー紹介
※まずは重要なネタバレなしで行きます。
ハンスは父の誕生日を祝うため、妻のディアナや娘ふたりと両親の家に向かってました。
出発が遅れ、急いでいたハンスは、高速道路の追い越し車線をゆっくりと走る白いバンをあおるように運転し、車線を変わるようアピールします。しばらくして、横の車線が空き、白いバンを追い抜くことができましたが、追い抜きざまに運転手と目を合わせ挑発します。
その後、立ち寄ったサービスエリアで先ほどの男と遭遇。謝罪を要求されますが、ハンスは決して謝ろうとしません。そして、そのまま車に乗りサービスエリアを後にします。しかし、先ほどのバンが車の後をついてくることに気づきます。
警察に電話をかけようとする妻・ディアナを制し、ハンスは自分で話をつけてくると車を止めます。男も後方で車を止めたので、話に向かいました。男は謝罪をすれば許すといますが、ハンスはそれを断固拒否。もめている間に男にスマホを奪われてしまいます。その後、妻に促され、謝罪をしますが、男は「謝罪のタイミングを逃した」とハンスを許しません。さらに、男は、車から噴霧器を取り出し、ハンスたちの乗る車の中に薬剤のようなものを吹きかけます。ハンスたちは、それでもなんとかその場から逃げることに成功。そして、警察に駆け込み、今回の事件について相談しました。
ここから重要なネタバレあり
男は、ハンスから奪ったスマホを操作し、ハンスの両親の自宅を特定。そのまま自宅に向かい、ハンスの母に「息子さんのスマホを拾いました」という嘘で近づき、自宅に上がりこみます。
同じころ、ハンスたちの車は、警察車両に先導してもらいながら、両親の自宅に到着。ハンスは「親を心配させるから警護はここまででいい」と言い、自宅まで付き添おうとしていた警察を帰らせます。
ハンスたちは両親の返事がないのを変に感じながらも家に入ります。そこで、両親が風呂場に閉じ込められているのを発見。やがて、男が現れ、ハンスに薬剤のようなものをかけます。ハンスは家の外に飛び出したあと、家族がいる2階の部屋に壁を伝って戻ります。その後、警察がやってきて、家族全員が無事保護されました。
男は、警察に気づかれないようにハンスの娘たちが待機する警察車両にやってきて、「君たちは悪くない」と言ってどこかへ立ち去ります。
その後、日常生活に戻ったハンスたち一家。そんなある日、ハンスが娘たちを学校に送った帰りに、後ろから白いバンがスピードを緩めず近づいてきて、ハンスを轢いてしまいます。
ここでエンディング。
感想
※重要なネタバレなしで行きます。
あおった車の運転手がやばい奴だった!というオランダ製スリラー映画。あおり運転、ダメ絶対!なメッセージもさることながら、子供の前で親としてどう振る舞うべきかということや、自分をよく見せるためだけのプライドは必要か?ということについても描いているように感じました。
イライラする主人公
観ていてイライラするタイプの映画ってありますよね。「あの登場人物の言動に腹が立つ!」とか、「ストーリーとか演出が突っ込みどころだらけだ!」といった具合に。でも、製作者は観客がイライラすることをわかっていて、それでも「この映画には必要なイライラだから」とあえてそういう映画にしている場合もあると思います。まぁ、それが単なる稚拙さゆえのものだったり、度を越えすぎていたら「この映画クソ!嫌い!」といった感じで、低い評価をしてしまいたくなりますが。
本作もまさに「イライラする映画」と言えます。イライラの原因は主人公であるハンスの行動。彼は、しょうもないプライドのせいで家族を危険にさらしています。謝ればすむのに謝らないし、警察に通報すれば助かるのに通報しない。これも全部自分自身をよく見せたいだけのしょうもないプライドのせいです。鑑賞中は、彼の行動にイライラしてきて「もっとこうしたほうがいいだろ!」と怒りを感じたりもします。この映画は、観客が主人公を反面教師として「こいつみたいにはならないようにしよう」と自身の行動を律することを目標にして作られていて、その点ではこの映画から感じるイライラは必要だったと言えると思います。
犯人の男
ハンスたち家族を襲う男の設定は、なかなか魅了的。まず、その姿が農作業用防護服(?)というあまり見たことないビジュアルです。そして、武器が農薬の噴霧器で、攻撃方法は何かよくわからない薬品を噴霧器で相手に吹きかける!それをモロに食らったら、顔に水膨れのようなものができ、意識がもうろうとしてくる様子。この殺人鬼は相手に謝罪のチャンスを与え、きちんと謝罪すれば見逃すという慈悲深い一面も。しかし、謝罪してきてもそれが遅すぎればダメ。「謝罪のタイミングを逃した」という決め台詞を放ったのち、容赦なく相手に薬品をぶちまける。一方、相手に家族がいても、その人たちが別に悪くないと彼なりに判断すれば命を奪うことはしない。ハンスの娘たちには「ジャンクフードは癌になる」と忠告する優しさもある。ジャケットにある通りこの男、確かに「イカれたサイコパス」ではありますが、どこか引き付けられる魅力を持っており、嫌いになれないキャラです。
緊張感のある場面が多い
全体的に、サスペンスフルな緊張感にあふれたシーンが多く、スリラー映画としての出来はなかなかのもの。あおった相手が後からつい来てるという恐怖感はもちろん、そのあと、車を止めて男とひと悶着があるわけですがここが特に良い。ハンスが奪われたスマホを取り返そうと男の車の窓に上半身をツッコんだ状態で、ディアナがハンスの体を引っ張ってその反動で、後ろに倒れこんでしまう。そのときちょうど後ろから車が来て頭を轢かれそうになるところはかなりヒヤッとします。このあとハンスたちが、男から逃げるため車に乗り込む場面もハッとびっくりする仕掛けがいくつもあってめちゃくちゃ楽しい。ここは一番の盛り上がりシーンで必見ですね。そのあと、ディアナの運転で男から逃げる場面も超絶危なっかしくて素晴らしい。車が逃げる道というのが閑静な住宅街の中にあって、他の映画の車暴走シーンのなかでもあまり見たことのないロケーションです。そんなきれいで、決して広くはない道を歩行者などにぶつかりそうになりながら猛スピードで駆け抜けていきます。道にいる人間を危険にさらしまくるし、当然娘たちはビビりまくりで大声でずっと叫んでいて、だんだんとイライラしてきて発狂しそうになりました。上のほうでイライラも映画には必要だと書きましたが、この場面はちょっとその範疇を超えかけています。
総評
ハンスにイライラしっぱなしの1時間半。中にはイライラしすぎて嫌いだという人がいてもおかしくはない。僕としてはまぁ必要なイライラだったと思ったのでそのイライラさえも楽しめるように努力して鑑賞しました。
殺人鬼のキャラも面白いし、ハラハラできる場面も多い。しかも、今なにかと話題なあおり運転をテーマにしているので、結構万人受けするんじゃないかなと思います。友人とか複数人で観ると盛り上がりそうではあります。
欠点はほぼないですが、上のほうでも書いた閑静な住宅地を暴走するシーンは、許容できるイライラ量を超えかけていたので少しそこがマイナスかな。映画を観ていて必要以上のイライラを味わうと「なんで俺がこんなイライラしなきゃいけないんだ」と理不尽な怒りが湧いて、映画の評価にも影響を与えるので、イライラのバランスとりって製作者にとっても気を遣う部分じゃないかなと思ったりもしました。
ということで、評価は9/10としました。
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