「ベン・イズ・バック」映画感想(ネタバレ)薬物依存症から抜け出そうとする青年の物語


「ベン・イズ・バック」は2018年のアメリカ製ドラマ映画。

結末までのネタバレを含むのでご注意ください。

作品情報

監督:ピーター・ヘッジズ

キャスト
ジュリア・ロバーツ
ルーカス・ヘッジズ
キャスリン・ニュートン
コートニー・B・ヴァンス

原題:BEN IS BACK

製作年:2018年

製作国:アメリカ

上映時間:103分

感想

薬物依存症の青年と家族のいい話。

クリスマスイヴの朝、19歳のベンは薬物依存症の治療施設を抜け出し、突然実家に戻って来る。久しぶりの再会に母・ホリーは喜び、温かく迎え入れるが…。

※【重要なネタバレなしの感想】とその後【重要なネタバレを含む感想】が続きます。

主人公の青年、ベンが薬物依存の治療施設を抜け出し、実家に帰って来たところから話がスタート。

ベンが突然家に帰ってきた理由。母のホリーがベンと電話で会話したとき、「クリスマスのプレゼントはあなたが帰ってくること」と冗談交じりに言ったことをベンは真に受け、薬物治療施設を抜け出し、家に帰ってきたのでした。あまりにも突然過ぎて母のホリーはかなり驚いている様子。ホリーの再婚相手のニール(=ベンにとっての継父)は、「家で過ごすのはまだ早いんじゃないか」とベンの滞在に難色を示す。ベンの妹は、ベンのことを煙たがっている感じというか、若干距離を取りたがっている様子・・・。

結局、ベンは薬物検査をさせられ陰性を証明したことで1日の滞在を許される。昼間は、母親とショッピングモールにでかけたり、元依存症の人々たちの集いに参加して過ごし、夜は、家族みんなで教会での集会へ・・・。集会が終わり家に帰ってくると、部屋中が荒らされ、飼っていた犬が姿を消していました。

ベンは自分が家に帰ったからと責任を感じ、犬を見つけるため外へ飛び出していきます。ホリーは、ベンを呼び止め親子で一緒に犬を探すことになりますが、ベンいわく、「心当たりのあるやつが多すぎる」と・・・。彼は、これまで大勢の人間から恨みをかうような生き方をしてきたんだな、ということがここでわかります。

ベンが必死で立ち直ろうとする姿が胸を打つ映画です。自分でドラッグをやめたいと思っていてもどうしても欲求が勝ってしまってやめられない苦悩が描かれています。ベンが服屋の試着室に入る前に、母親にボディチェックをされるシーン。ボディチェックが終わって試着室のドアを閉めるとき、ベンは「靴のチェックが終わってない」とボソッと漏らします。ベンは自分はドラッグを持っているということを知ってもらいたい気持ちがあって、無意識に口をついて出た言葉だと思います。

ベンの母親ホリーが親身になってベンをサポートする姿も思わず涙ぐんでしまいました。ホリーを演じたジュリア・ロバーツがかなりの名演でした。ホリーはベンが薬物依存症になった原因を作った医者に対して「苦しんで死ね」と言ったり、薬物依存から抜け出せないベンを墓地に連れて行ってどこに埋められたい?と問い詰めたりと、ギョッとする言動もあります。医者に暴言をはくシーンとか声に出してうわって言ってしまいましたよ。こういう映画が引き締まる刺激的なシーンもあって飽きが来ないようになっています。

ベンが薬物依存症になるきっかけとか、過去に関わった悪事などが、回想シーンではなくベンが街で出くわした人々のリアクションとか彼らとのやりとりを通して語られていくスマートな語り口。ベンの人物像がだんだん浮き彫りになっていくのを観ていると更に彼がどんな人物か知りたくなってきて、どんどん映画にのめり込んでいってしまいますね。


※ここから重要なネタバレを含みます


犬を盗んだと思われる人間のところを何箇所も訪れ、ようやく犯人がクレイトンという男だと判明します。ベンとクレイトンの関係についてですが、過去にクレイトンのもとで仕事(おそらくドラッグのディーラー)をしていたのがベンでした。

クレイトンは、犬と引き換えにドラッグの運び屋を一度だけしてくれとベンに頼みます。犬を奪ったのは、ベンにこうして仕事をさせるためだったのでしょう。

ベンは、無事ドラッグを目的の場所まで届け、クレイトンから犬を取り戻します。しかし、このときクレイトンはお礼にと、ベンに少量のドラッグを渡します。

ベンは、犬を乗せ、車を走らせます。しかし、その途中、車に犬を残し、自分は近くの小屋で服薬自殺を図ります。車にベンが残した遺言メッセージが近所の人の目に止まり、ホリーへ連絡が行きます。ホリーは、ベンのもとへ駆けつけ人工呼吸をして死にかけていたベンを生き返らせます・・・。

ここでエンディング。

ラストでベンが自殺を図った理由を考えてみたいと思います。ベンが犬を取り戻したあとに自殺を図ったのは、クレイトンからドラッグをもらったことで自分は一生ドラッグから逃れられないんだ、と絶望したからだと思います。まぁクレイトンからドラッグをもらったことだけが原因ではなく、最後の決め手だった、と言ったほうがいいかも。それ以前にも、自宅の屋根裏でも家の近所の道でもドラッグにまつわる記憶が蘇り、元薬物依存者の集まりでもドラッグの誘惑はあったりと、至るところでドラッグがちらつき、また前の生活に戻ってしまう恐怖が彼にはあったと思います。ベンがいくら薬物から離れたいと思ってそれを実行しても周りの人間や環境ががそうさせてくれない苦しさみたいなものも伝わってきました。

自殺を図ったベンがホリーに蘇生され意識が戻った瞬間でこの映画は終わります。死なずにすんだと考えれば一応ハッピーエンドですが、ベンの薬物依存から抜け出す戦いの新たな始まりとも言えます。このスパッと終わるラストは、ベンの今後の人生について色々と考えさせられる素晴らしい終わり方だと思いました。

総評

薬物依存症から抜け出す青年の物語。地味な人間ドラマが最後まで続くのかと思いきや、サスペンスタッチな展開になったりとエンタメ作品としても楽しませてくれます。主人公の過去を語る手法もうまくてついついのめり込んで観てしまいます。家の近くのショッピングモールに行ったら知り合いがいて、家に戻ってきているというのが勝手に広まってしまう地元の怖さ的な部分も楽しいあたり。

犬を盗んだ犯人探しのパートが少し単調で退屈に感じる場面も。ただ、ここは、犯人候補多すぎっていのが笑えるし、過去にベンが傷つけた人たちが次々と登場するショッキングさもあるので、犯人探しというミステリーとしてみなければ、やはり面白い。

というわけで評価は9/10としました。

ストーリー紹介

クリスマスイブの日。

薬物依存症のため治療施設で暮らしていた青年ベンが、突然、実家に帰ってきます。

継父のニールが「ベンが家で過ごすのはまだ早い」と主張し、ベンの母ホリーと揉めた結果、ベンは一泊だけ実家に泊まることが許されます。

その日の夜、家族みんなで、教会の集会に行き、家に帰ると部屋中が荒らされた形跡があり飼っていた犬もいなくなっていました。

ベンはこの事態を招いたのは自分が家に帰ってきたからだと責任を感じ、ひとりで犬を探しに行こうとします。それに気づいた母ホリーも加わり犬を盗んだ人間を手当たりしだいに探し始めます。

色々と心当たりの人間を探し回った結果、ベンたちはクレイトンという男が犬を盗んだとつきとめます。ベンは過去にクレイトンのもとでドラッグに関係する仕事をしていましたが、今は関係を絶っていました。

ベンはこの先は危険だからと、すきを突いて一緒にいたホリーを巻き、一人でクレイトンのもとに向かいます。

クレイトンは犬を返してほしければ、一度だけヤクの運び屋をしろとベンに告げます。

ベンは、運び屋の仕事を無事に終え、犬を返してもらい、報酬として少量のドラッグを渡されます。

その後、車を走らせ見知らぬ場所に停車させます。飼い犬と書き置きを車に残し、自分は近くにあった建物で薬物自殺を図ります。

書き置きを見た通りがかりの男性からの連絡でホリーはベンの居場所を知り、すぐにその場に駆けつけます。

意識のないベンはホリーの人工呼吸によって意識を取り戻しました。

おわり

参考サイト:ゲオ宅配レンタル


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